劇団キンダースペース レパートリーシアター Vol.49
k#95
ママ先生とその夫
作/岸田國士 演出/深町麻子
劇団キンダースペース レパートリーシアター Vol.49
【当日アンケートより】
9/20(月)Aチーム
★私ならどの女性が当てはまるか、考えながら観ました。(女性)
★とても良い作品でした。古木さんすごいですね。(女性)
9/21(火)Bチーム
☆お疲れ様。とっても面白かったです。「殴られ損」ってのが良かったです。ありがとうございました。(60代男性)
☆「岸田」が好きなので観に来ました。岸田の作風とはやや異質と思うけれど、皮肉が効いたユニークな作品。猿はきっと猿廻しのところに帰って来るのでありましょう。台詞のよく通るスタジオだと思います。ありがとう。お疲れ様。(70代男性)
☆セットが固定でシーンの移り変わりがない中で、緩急のある間、登場人物の印象でテンポよく観ることが出来ました。最後の夫の狂ったような長ゼリフは、なんだかシェイクスピアを見ているようでした(笑)(女性)
9/22(水)Bチーム
☆”先生”と名の付く人たちのダメな部分ってすごく面白く観ることが出来て大好きです。皆ダメだな。ママ先生の決断が好き。(女性)
☆迫真の演技で堪能しました(時間を忘れる)(男性)
9/23(木)Bチーム
☆演出か偶然かわかりませんが、女性キャラの背筋が皆さんピンと伸びていたのが、朔郎さんとの対比が出ててよかったです。大変見応えのある公演でした。(男性)
☆これぞキンダーワールドですね。主人公のママ先生、切ないけれど憧れます。
9/24(金)Bチーム
☆こんなに苦しくて苦しくて切ない笑い、久しぶりに笑い。帰ってゆっくり心の中に広がる黒と白・・・かみしめます。Thanks。
9/25(土)Aチーム
★大正・昭和初期の教師たちの葛藤、恐いねぇ。セットの色ガラス、美しい。ゼラを貼ったのでしょうか?(男性)
★有田先生がまる子のタマちゃんのようでよかったです。(50代男性)
★とても楽しめました。大正時代ということで自然な自身の気持ちをながめることに慎重で、自身の社会観、道徳観と戦う様は、現代であれば自由に表現するところですが、その様子がおかしみになって伝わりました。現代劇としても、とても面白い設定、Storyでした。(女性)
【終演後いただいた劇評・感想より】
◆西川口・キンダースペース・アトリエで劇団キンダースペース公演「ママ先生とその夫」(演出=深町麻子)。
岸田國士が1930年に「改造」に発表し、1932年4月に築地座第3回公演として上演した「喜劇」作品。同時期の作品は「犬は鎖に繋ぐべからず」など。
主人公は奥居町子(古木杏子)。東京郊外の新開地で寄宿制の私立聖風学園を経営しており、生徒たちからはママ先生と慕われている。年下の夫の朔郎(森下高志)は虚弱であることを口実に町子に依存。いわば町子のヒモのようなものだ。家父長制の時代、町子は夫を養う家長であり、朔郎は妻に頭が上がらない。
その一方で、若い教師の有田道代(山崎雅葉)や変死した生徒の母親である花巻篠子(原田祈吹)に言い寄っている。
篠子には甥と称する愛人・富樫(関戸滉生)がいて、朔郎はその口止め料を着服して旅に出、道代も呼ぼうとするが、実は篠子が一緒だったことが判明する。なんていい加減な男。
しかし、朔郎にも多少は同情の余地はある。
彼は自分が妻の猿回しの猿の腕に抱かせた人形でしかないと卑下している。一方、町子は自分が朔郎に愛されていないことを自覚している。
自立する女、依存する男。すれ違う心の男と女の結末。
町子は居並ぶ生徒たちの前で突然別離を宣言する。
「朔郎先生と道代先生はこれからよそに転任します。お二人の幸福を祈って最後の挨拶しましょう」と。
思わぬ展開に泣き伏す道代と呆然自失の朔郎。
生徒たちの前で有無を言わせぬ実力行使とはさすがに「新しい女性」といえるが、こうでもしなければまたずるずると関係が続くことを考えて未練を断ち切った町子は「古い女」でもあったのだろうか。
そして「自分より格下の女になら夫を渡してもいい」という女のプライド。…怖いですね。
と、まあ1930年の日本の男女のお話なのだが、今見てもそんなに古くはなっていない。
女性の権利獲得を目指した大正デモクラシーの時代と現代。今も女性に対する不当な差別はある。というか陰湿になっている。
喜劇仕立ての岸田戯曲。
子どもたちは登場せず「声」のみ。
町子役の古木が冷然とした佇まい、だめ男に魅かれる山崎がチャーミング。そして自分のコンプレックスから女たちを翻弄する森下のダメ男っぷりがいい。ほかに杉山賢、林修司、小林もと果。
(演劇ジャーナリスト 山田勝仁様)
◆観てきましたぜ。
古木杏子にこういう高潔な感じの女史を演らせたらピカイチなのですww
強気な女性に垣間見れるふらっとした動揺までもが演技になっていて魅せられました。
おもしろい芝居でした。全体に深町麻子のあの薄ら笑いが透けて見えたよww (栗田章様)
◆年下の夫とともに、新しく自由な教育を実践する男女共学の寄宿学校を運営する主人公を中心に描かれています。
1910〜20年代「大正デモクラシー」の中で繰り広げられた「ハイカラ」「モボ、モガ」と華やかさがもてあそばれた時代。その裏では「関東大震災」下での朝鮮人大虐殺、労働組合運動などへの激しい弾圧が行われていました。表向きは「自由」にまみれた時代は、中国大陸大侵略への天皇制軍隊の準備の時代と重なります。そして第二次世界大戦への。
芝居は自由を履き違えた「時代」への警告、シッペ返しの作者の意図を感じました。ベテランから新人までビシッと締まった舞台でした。演出の深町麻子さんお疲れ様でした♪ (日高のぼる様)
◆劇団キンダースペースの「ママ先生とその夫」を観てきました。中山学園がアクトコミュニケーションでお世話になっている、古木さんと小林さんが出演しているんだから観ないわけにはいきません。お2人は安定の演技ですね。
しかもその夫の役は、私が大ファンである森下さん。今回も良かったなぁー。全編でただただ、だらしない夫も、ラストで突き抜けただらしなさを魅せてくれました。
60を過ぎている私ですが、早くああいう役者になりたいものです。(笑)
深町さんの演出も素敵でした。 (福井誠様)
◆生真面目にきっちり演られていて完成度がめっちゃ高い舞台だった。
役者も上手いし狭い空間での動線の使い方が絶妙で広がりを感じさせ演出、美術・装置、照明、音響。。。見事に一体化して作品世界を創り上げていた。
脚本の台詞が面白くて私は声を上げて笑ってたんだけど、キンダーは観客も生真面目なのかシーンとしてた(笑)
ただわたしには隙が無いというか緩みが無いというか。。。この芝居はもう少し襟の抜けた遊び心があった方が面白くなる気もした。
古木杏子さん、小林もと果さん。。。私如きが言うのも失礼なんだけど良い女優さんに成長されて感無量。
彼女たちが「芝居する」ってことを楽しんでいるのが伝わって来てコチラ側も楽しくさせてもらった。。。今後彼女たちが突破口(笑)となって「襟の抜けた」華のあるキンダースペースになって行く嬉しい予感がした。
そしてなにを隠そう私、『しんしゃく源氏物語』の女形を観た時から関戸滉生くん推しです。今回も良かったなあ (Yumiko Naka様)
◆今日はどんな舞台になってるのかなあ、向きはどっちかなあーとまずはそこからワクワクでした。
道路からの通路、入り口、会場とにかく清潔で綺麗にお掃除が行き届いて、アトリエ内の床もピカピカ。隅々まで感染対策を徹底しての公演という印象でした。大変ありがたいです。安心して楽しめました!でも、(マスクしてましたよ)たくさん笑わせていただきました。逆にあんなに笑わせちゃって大丈夫ですか。
って、ついつい 押さえられずに(笑)。
今回も観る前に青空文庫で作品を読んでおきました。わあ面白い女性達、変わった夫婦だなぁと思い、なんだかんだ女性っていつの時代も影響力大だなあって。
これをどんな風に見せてくれるのだろうと、どちらかというと 深刻な雰囲気なのかなあと想像していたのですが…やられました。まず 客席が教室の生徒側。しかも、私達観客は小学生くらい。冒頭の道子先生の授業に思わずうなずき、はーいと返事をさせられてしまう。そして、ママ先生のお話はきちんと理解しようと吸い込まれるように聞き入り、唱歌もしっかり歌ってしまうという…もう最初から止まりません。ヤバいよ。すしくしていられないよ!と。登場人物(役者さん)全員の個性が(演技)が全ておかしくて、こっけいで、情熱的でどんどん引き込まれてしまう。間合い、テンポ、セット、照明全て絶妙なチームワークのような劇で、最後は私も「朔郎先生、有田先生ご機嫌よう!」と、喜んで笑顔で拍手しておくってしまうというなんとも楽しいお芝居でした。そして、古木さん(ママ先生)の表情がチラシのママ先生の表情とそっくりで、チラシを眺めているだけでママ先生の声が聞こえてくるようで…終わってからもずっと楽しめています。(小久保直美様)