劇団キンダースペース レパートリーシアター Vol.50
k#97

夜明けに消えた

作/矢代静一  演出/原田一樹

感想・舞台写真

A上演時アンケートより】


★ノッポの心の変化が見ていてとても辛かった。各人物の変化を見ているのが難しく、面白かった。

 ハッピーエンドの話ばかり見てきた自分にはとても新しく感じた。(25歳男性)


★遠藤周作の「沈黙」が思い出された。長編を2時間強にまとめたのは快挙!

 キリストへの思いを中心にそれぞれの痛みや喜び、大いに堪能しました。


★公演を観るようになって4年になりますが、劇団が成熟していくのを感じます。次回も楽しみにしています。


★とても迫力のある演技で作品の中に引き込まれました。

 西本さんをはじめキャストの皆さんがとてもすごかったです。忘れられない日になりました。


2時間15分、緊張して観ることができた。初めて観る劇団でしたが満足できた。遠くから来たかいがあった。キリスト教を信じている脚本家なことは知っていて、ほんの12本は観たことはあったが、素晴らしい内容(演出家、役者群あってのことだが)だった。(72歳男性)


2時間15分、息もつかせない緊張感の中観ることが出来ました。

 テーマはとても難しいですが、演者の力量が観るものを退屈させることはありませんでした。

 ありがとうございました。(60代男性)


★スターダスでも同じ公演を観ました。同じ作品を演じる事、また前回と同じ役、違う役を演じるのはとても大変だろうと思います。とても難しい話ですが、2度目ということもあり、理解(?)できた部分もありました。これからも頑張ってください。


★とても感動しました。内容も演出も役者さんも。特に衣装はすごく印象的に残っています話に合っているのはもちろん細かいところまでその役に合った装飾があり、衝撃を受けていました。

 これを機に沢山の作品に触れてみようと思いました。狭い空間がとても広く感じました。何度でも見たい、そう思える舞台でした。(20代女性)


★キリスト教が関わってくる話と聞いて、私に分かるものか不安でした。

 しかし芝居に圧倒され、最後まであっという間でした。観ることが出来て良かったです。


★思っていたものと全く違ったので、ゆっくり考えたいと思います。現代の問題と自分の問題と信仰?生と死、性も。(70代男性)


★苦しい話だった。心がきゅっとした。(10代男性)


★自分たちが過ごしている日常を考えさせられる気がした。とても面白かったです。(20代男性)


B上演時アンケートより】


☆現代日本とキリストの時代のイスラエルが交互に出る展開にワクワクしました。純粋だった熊の心の変化が悲しいです。出世したのに満たされることはなかったと想像が湧きました。


☆力いっぱいのストレートプレイに心動かされました。

 45年前に大学でみんなでこの劇をつくったことを思い出しました。(60代男性)


☆何度も涙しました。それぞれのキャラクター、役割が明確で面白かった。星空のシーン、キレイでした。場転もかっこいい演出でした。人はすごく変わってしまうもの。沢山考えさせられました。(40代女性)


☆信仰とは重たいし、難しいし、私には無理でしょう。芝居はよく理解できたし、面白かった。

 私はなぜ人は信仰してしまうのかが宗教ってすごいですよね。クレイジー。

 見入ったので、時間あっという間でした。音も引き込まれて、芝居に集中しました。


☆「信仰」という普段私はあまり考えないようなことをテーマにしたお話しでしたが、すごく単純な言葉にはなりますが、考えさせられましたし面白かったです。ひばりが大好きです


☆ぐずの役者さんのおばあさんのフリがよかったです。ひばりの落ちてるお魚を拾えなかったのに、入水しようとする2人を止めたところにグッときました。白百合の話をするノッポの、話し出し始めたばかりのタイミングで、まだ言いたいことも観客には分からないはずなのに、ぐずへの想いが伝わってきて、震えました。感慨を受けました。人はなぜ生きるのか。お疲れ様でした。


☆小劇場での観劇経験はありましたが、客席の自身の横を様々な出演者が入れ替わりする迫力に圧倒されつつ、客席に居ながら自身が舞台上に居るかの様な不思議な感覚になれました。


☆難しかったですが面白かったです。それぞれの考え方が変わっていく様が丁寧に描かれていて、凄いと思いました。


☆宗教とは奥深く難しい、また別の作品も見たくなった。


SNSなどにいただいた感想より


◆実は22年前、シアターXで同作品を観た。

その大作を、劇団の西川口アトリエでやると聞いたとき、「え?!夜明けをアトリエでやるの? と確認したくらいだ。

和田 さんのカリンバのような音で、その世界に導入する。

いやぁ、見ごたえがあった。2時間15分、一気に見せた。

我々もWSで使用させてもらってるあのアトリエ空間が、まったく別の空間としていて成立していた。

いやぁ、凄かった。面白かった。

後半ノッポ関戸滉生が岩場で聖書を読むシーンがあるが、実に見事で、アトリエであることを忘れた。

今回、若手女性は2チーム。今日はBチーム。

けちは、大きなオメメで眼力があり、表情がとてもよかった。

ひばりは、けなげで一生懸命な感じに好感が持てた。

ぐずは大役だったが見事に演じきった。マリア様のような優しい表情が印象的。

そして若手の活躍を支えるベテラン俳優たち。

主役の関戸滉生くんの成長ぶり、若手の杉山くんの頑張りは見ていて嬉しくなった。

そしてモリシ森下 高志、林くん、深町ちゃん深町 麻子、もと果ちゃんたちベテランの安定感、存在感など、キンダーは安泰だね♪

素敵な時間をありがとう。

演出の原田さんがパンフに書いていた「時には「夜明け・・」に戻らねばならない」という言葉、「危機」は蒸発したのではなく、見えなくなったという一文、心に残った。

(栗田かおり様)


この戯曲の初演は1968年とのこと、自分の生まれた年なので、特別な思いで観劇しました。

キリスト教の信仰を根底に展開して行くのですが、男性の演じる「ノッポ」「熊」「弱虫」と自分のタイプを診断してみたりして。

皆それぞれ、何か見えない力に導かれて、もがき苦しみ 演者の迫真の演技に圧倒されつつ、最後にノッポとぐずが海に消えて(身投げ)行く場面では、何故だか清々しいものを感じました。(石井信生様)


気になっていたんです。チラシの素材に砂浜に打ち捨てられた老木の根を背景にしている。演劇を知らせるにはチト暗すぎなぃか、と思って会場に向いました。

開演間近になって、客席には砂浜の波音が重さを持って聞こえてくる。

舞台には折れた柱や壁があり、いずれもその中身が鉛白のように現われている。

この芝居は難しい。現代と古代が交差し、目に見えない神がをテーマとしている。若い3人の青年と3人の娘が、お金、貧困、差別、権力、神、そして愛を語る。何を信じ何故生きるのか、そして主である神が心に宿る過程の青春の壮絶な、心の戦いを展開される。

ラストは神を罵っていた男と信仰する女とが、観客席のうしろの海に消えゆく。観客の心の中には入っていくかのように・・・・

波音が一層重みを増して・・・

ここに来てやっとチラシの意味が解りました。鎮魂が込められていることを!

作品は54年前に初演されたものだが、演出家原田一樹氏は現代の若者にこれ程までに自分に対置できるかのメッセージと、安らかでない世の中に怒りが込められている。

どの俳優たちも役の自己の心を開示するという難し課題に答え、新たな創作技量が上がったのを目の前にしました。

照明や音響も演出とマッチして、押さえ込んだ内面重視のプランに好感しました。この劇団はスタッフに恵まれている。

アトリエは20名程の観客に絞って行われ、贅沢な公演である。2時間の休憩なしだが、短く感じられた。(小山内秀夫様)


キリスト教の信仰を中心にエルサレムの地のイメージで進行されていく舞台に、現代(1968年初演)の人間模様も絡み、信仰をめぐる葛藤が展開されていきます。

イエスもノーも関係ないわたし、アトリエの定員は20人ほど。目の前で繰り返される芝居は、自らの身体がまさに舞台と一体化しているのを感じ、発声から表情から、汗から涙から間近で興奮しながら拝見しました。みなさん熱演で休憩なし2時間15分の舞台堪能しました。 (日高のぼる様)


「これからは、せわしい時代にはいる。お前一人の空しい声を、立ち止まってきく暇人などおりゃせんのだ、誰も、誰も」

昨日マチネは劇団キンダースペース・レパートリーシアターVol50「夜明けに消えた」(作=矢代静一、演出=原田一樹)@西川口・キンダースペースアトリエ。2時間15分。

 矢代静一が1968年に青年座に書き下ろした作品で、2013年に「青年座・セレクション」と題したシリーズで青年座が再演している。

 ファッションデザイナーのノッポが失踪する。彼はどこに消えたのか。それまでの奔放な生活を捨てたのは何故なのか。その疑問に答えるかのように、彼から友人に宛てた分厚い手書き原稿の戯曲が送られてくる。

 そこには、キリスト磔刑直後のエルサレムを舞台に、信仰への迷いを抱えながら生きる6人の若者たち、ノッポ(関戸滉生)、熊(森下高志)、弱虫(杉山賢)、ぐず(西本亜美)、けち(岡田千咲)、ひばり(中根瑠理)の葛藤が描かれていた

 6人に託されたのは、「神をののしる男」「神を信仰する女」「神を身代わりにした盗賊仲間の姉弟」「神に憧れる奴隷」「神のことを知らない娼婦」。

 ノッポの現実世界と戯曲の虚構が交差し、「神と人」をめぐる問答が展開する。人を信じること、人を愛すること、神を愛することとは何か。

 矢代静一自身の内面の葛藤を描いた作品であり、矢代静一はこの作品を書き終えた後、四ツ谷・聖イグナチオ教会で洗礼を受け、カソリックに入信する。代父は遠藤周作。

 ノッポの妻、聖女・ぐずは火あぶりの熱さに耐えかねて棄教しようとする。

 しかし、悲惨さの中でノッポとぐずが手を取り合って海に向かって後ろも振り向かず歩いていく終章が作者の決意を表している。

 冒頭のセリフは熊がノッポに向かって言うセリフ。1968年、時代は確かにせわしなくなっていった。

 若手を中心としたキンダースペースの俳優陣はこの難易度の高い戯曲によく格闘し、密度の高い劇空間を作り上げた。戯曲の言葉が届くのはアトリエの小さな空間の方がいいのかも。(演劇ジャーナリスト 山田勝仁様)


山本洋三様

木洩れ日抄 87 「不可能」を超えて──劇団キンダースペース公演「夜明けに消えた」(Bプロ)を観て


舞台写真 A

















舞台写真 B


















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