けさくの感激覚え書き その四(2006)


かぐやの物語
12/27 Potalaka
音や金時
愛を与える女
愛を語る男
12/18日 いさらい香奈子  MIKIO
シアター2+1アトリエ
 
 何年か前にもこの二人の、歌とジョイントしたお芝居形式のものを拝見しました。その時よりもずっと心に残るというか、納得出来る時間でした。
 香奈子の時間【愛を与える女】は、いさらい香奈子という歌手であり女優である女のまさしく内面を吐露し抉られ苦しみ悶える芝居でした。
 台本はシアター2+1の代表仲原さんがお書きになったということですが、多分、香奈ちゃんが日頃、世間話で語ったり、相談したり、愚痴ったり、酒の席で吐露したりした香奈ちゃんの現実のエピソードを繋ぎ合わせ、それに少しのフィクションを加えて作ったものでしょう。だから、香奈ちゃんにとっては、まさしく自分の事なんだけれど、「演じる」というフィルターをかけた時に、客観的な視点で自分を見つめている(という演技をしている)香奈ちゃんが、とても面白く、愛すべき人間に見えました。
 とにかく、香奈子ちゃんが生き生きしていた。くるくると秒刻みに変わる表情にも嘘がなく、息遣いもリアルだった。
 きっと本人は大変だと思う。自分を演じるという恥ずかしさもあるでしょうし、戯曲の上で、どこか自分を美化し、正当化しないと出来ない作業でもあるでしょうから。
 すごくヨカッタし勉強にもなりました。私にはああいう役を演じる機会は無いでしょうけど、芝居の役どころとして、戯曲の中で一つの役を与えられた時に、あの位生き生きと過ごすことが出来たらなあ……と思いました。
RabiSariコンサート 12/17 RabiSari
鶴瀬西交流センター

鶴瀬は、RabiSariの和田啓さんと松本泰子さんと、ミュージカル「アンデルセン☆ストーリー」のスタッフを御一緒させていただいた場所。当時の制作の伊藤さんの呼び掛けで実現したコンサートで、ミュージカルの仲間もたくさん集まり、久しぶりの笑顔に会えました。
「アンデルセン☆ストーリー」のテーマ曲を歌うコーナーがありプログラムみながら、「あれ、どんなんだっけ?!?」とずっと心の中で考えていましたが(笑)、演奏が始まったら やっぱりちゃんと歌えました。こういうの私いつもは恥ずかしくて歌えないんだけど、ミュージカルの仲間がいたから大きな声で歌ってしまった。楽しかったです。
相変わらず泰子ちゃんの歌声は心に響いて参りました。それから常味さんのウードは勿論ですが、お話する声がとっても美声!! でびっくりしました。ウードと同じように響いていました。そして和田さんはいつものようにやっぱりカッコよかったです!!
お月さまへようこそ
12/13 劇団大樹
スタジオアキラ
幽霊
12/3 アクターズスタジオ櫻会
櫻会スタジオ
DEL AMOR de ESPANA ・
11/30 岡本倫子スペイン舞踊団
東京芸術劇場中ホール

夏にシアター1010で、岡本倫子スペイン舞踊団発表公演のお手伝いでアナウンスをやった。その岡本倫子さんの公演である。
岡本さんは私の青年座の同期で、原田とは自主映画を共に作った仲である。今やスペイン舞踊の第一人者となった。
一昨年のこの時期の公演には、まだスターダスに所属していたワークユニットの弥吉を、男性ダンサーとして推薦し、どきどきしながら観たものだ。
その時に、共演のミゲル・アンヘル氏の、ものすごく細かい足捌きにびっくりしたものだが、今回それが輪をかけていた。フラメンコという域を超えて、なんか違う踊りを観ているようでした。
最後にものすごい勢いでクルクル回転すると、脱水機のように汗が四方に飛び散り、そんなことまでがショーになっていました。

アルバニアンドリーム 11/30 劇団NLT
シアターX
スパイス
11/19 クロカミショウネン18
吉祥寺シアター
冬華
11/9 文化座
俳優座劇場

文化座引揚げ60年記念・創立65周年記念企画第一弾「冬華」を観て参りました。
東京大空襲で拠点を失った文化座の座員たちが、新京での公演中に敗戦を迎えて、ソ連軍の侵攻や内戦に怯え乍らお芝居を続けていくお話です。劇中は「楡座」という劇団の物語として、主役は現座長佐々木愛さんのお父さん佐佐木隆さんと、お母さんの鈴木光枝さんを筆頭に文化座の役者たちがモデルとなっています。
日本は敗戦し、帰るに帰れず、満州で、暴動や弾圧に怯え乍ら「やはり芝居をやり続けるしかない」と確信する登場人物に、私は演劇人として素直に感銘しました。
是非お芝居をしている人に観に行ってもらいたいと思いました。
19日まで、俳優座です。
http://bunkaza.com/

劇中、佐々木愛さんは満州で産まれたように描かれていますが、実際には日本で産まれてすぐに、両親が愛さんを親戚に預けて渡満したそうです。終演後お酒を同席させていただいたのですが、「もし両親が引き上げてこられなかったならば、今の私はここにいないでしょう…」とおっしゃっていました。

アラブ・イスラエル・クックブック
11/7 一跡二跳
シアターTOPS

武田竹美ちゃんが出ていたので久しぶりに観てきました。面白かった。うさぎちゃんに紹介されて、「アルナの子どもたち〜パレスチナ難民キャンプでの生と死〜」を観たから、芝居に出てくる台詞でどうしてもその映画の映像が出てきました。
脚本が面白いと思いました。殺したり殺されたりということを目の当たりにせざるを得なかった、残された人々が、「食べる」こと「生きる」ことにこだわる戯曲です。
長山藍子さんが出ていました。相変わらず品が良く、素敵でした。

はるなつあきふゆ
11/6 [独歩]プロデュース公演
吉祥寺シアター
銀河鉄道の恋人たち
10/28 声の劇団イマージュ
野方WIZ

お友達の栗田かおりさんが出演。よく伺う劇団名だったので興味深く拝見しました。
同伴のjunさんが「さすが声の劇団だけあって滑舌がよかった」とおっしゃってました。
ただ私は演出の古めかしさが気になり、戸惑いました。
かおりさんはその中でワンポイント色を与える看護婦さんの役。楽しいシーンを演じてました。……いや、内容は戦争の話ですからあまり楽しいシーンではないのですが、かおりさんのたたずまいは楽しかったです。

天国までの100マイル
8/29 文化座
北とぴあ

原田演出の文化座公演の中で大好きなお芝居です。
現在は演劇観賞会向けの旅回わりをしている最中なので、初演の際に俳優座で拝見した時とはまた違った感じのお芝居(少し大きな劇場でやる為のお芝居)になっていましたが、主演の3人、安男役の米山実さん、お母さん役の有賀ひろみさん、そしてマリ役で、座長の佐々木愛さんのお芝居は、相変わらずズシンとこちらに届いて、好きでした。

わくわく☆探検記
8/26
キラリ☆ふじみ

元キラリの職員でキンダースペース友の会会員の伊藤さんのお薦めで、その後のキラリバックステージツアー「わくわく☆探検記」にも参加してきました。
キラリの劇場からロビー、廊下、通路、事務所に至るまで全てを使ってパフォーマンスを楽しみながら見て歩く…というツアーでした。
まずはキラリのあの池からパフォーマンスが始まります。池の通路で見ていると、派手な格好の人たちが池を歩いてこちらに渡ってきます。その中のひとりの妖精が、ヒラリと池の淵に飛び乗ると、ヒラヒラと踊り乍ら、私達を渡り廊下からアトリエ展示室へ導きます。そこにはツアーを先導する二人の女の子がいて……と、まあ、色んな人たちが劇場のあちこちに居て楽しませてくれるワケです。
劇場機能の説明はパンフに書いてあるだけでツアーの中では一切しないのですが、それが返って興味も持てるし面白かった。
元職員・伊藤さんも「知らなかった!」と言うところまで探検しました。「そんなところにドアがあったの?!」みたいな……。メインホールの外側通路まで歩きました。あと劇場キャットウォークもね。(怖かった!)
私が密かにバカウケしたのは、事務所の机の上で、派手な女の人と魚たちが踊ったり飛び跳ねたりしているのに、ナニゴトも無いように事務仕事をなさっていた職員のNさんで〜す♪(笑)
最後は幕が降りた舞台上に集まって、秘密の呪文を唱えると幕が上がり、客席と舞台に光りの輪が降り注ぎます。そこでなんと、みんなで踊っちゃう♪……なんてことまであったりして……。小さい子もおばあちゃんも踊っておりました。
演出も良く考えられていたし、パフォーマ−たちのクオリティも高かったです。もっと早く知っていればみんなで行ったのになあ…と悔やまれました。

さがそう。ぼくらの『青い鳥』!
8/26 こども演劇ワークショップ発表会
キラリ☆ふじみ

キラリ☆ふじみで、こども演劇ワークショップ発表会「さがそう。ぼくらの『青い鳥』!」という子供たちの6日間の演劇ワークショップの発表があったので見に行きました。
アンデルセン☆ストーリーに出ていた子も3名参加していました。
15分間のお芝居でしたが、みんなで意見を出し合って作ったそうです。マルチホールに久しぶりの輝く出演者やお母さんたちの顔を見て嬉しくなりました。

アンティークショップ雨宿り
8/25 シアター2+1
シアター2+1アトリエ

毎年楽しみにしている夏休み恒例の2+1の公演です。
代表の仲原さんの描く世界は、西荻の街角のどこかに本当にありそうな、でも絶対に無いだろう! …という不思議な空間を描き出します。台詞も日常会話でありながら、うまい具合にそぎ落とされて、そぎ落とされた中に、琴線に触れる台詞がちりばめられているので、同行した人たちはみな涙涙…でございました。特に戦争中の話になるところでは、好きな女優さんの三原さんの言葉の重み(言い方は軽いんだけどね)が伝わって来て、ヨカッタです。

以下、私が掲示板に書いた感想です。

同行したクマさんが「最初から最後までなんだか涙が止まらなかった」と言ってらして、連れていった冴ちゃんも嬉しそうでした。
琴線に触れる……というか、台詞がこちらに響いてくるようなものが多くて、その度「うっ」と詰まったりして、「これは冴ちゃんは駄目だろう……」と横目で見ると、ハンカチ女王になって目頭押えてました。(笑)
アトリエも2+1の役者さんたちも良い味を出していて、何年も見続けている私達は、ずっと見ていたい…という思いに駆られるのだと思います。
過去の作品を仲原さんが台詞で言う時、嬉しそうに笑っているファンの人たち(としちゃんとか!)を見て、幸せな気持ちになりました。
これも同行したしんちゃんが、「ずっと続けて欲しいよねえ。」と居酒屋でぽつり言いました。
香奈ちゃんの、少し時代が遡った人の役づくり、面白かったよ。
大好きな三原さんも良かったなあ……。
千秋楽まで頑張ってください。

修善寺
8/25 今申楽 朧座
杉並公会堂

朧太夫さん率いる今申楽 朧座は「申楽」を基本にお芝居を創っていこうというユニークな集団です。面を付けて演じる朧太夫さんの北条政子と、川野誠一君演じるところの源頼朝の親子の愛情が伝わってくるお芝居でした。この形をより突き詰めていくと、もっとすっきりした面白い形式のお芝居が出来上がってくるのではないか…と、この団体に期待する気持ちになりました。
特に感情が激してくるところなど、もっと能や歌舞伎のように「そぎ落とした」表現に出来たら、面白いなあ…と思いながら見ておりました。

舞台監督として劇団キンダースペース村信保が御世話になりました。

100万ドルは誰のもの!?
8/16 Bamboo プロデュース#1
駅前劇場

原田演出のコメディー。懇意にしている武田竹美さんがプロデュース、主演。
原田がこういうお芝居の演出をするのは珍しいので、興味深く拝見しました。
白州本樹さんが、爆裂!! おもしろいなあ……。

広島の姉妹
8/3 オフィス・サエ
スタジオVARIO

サーティーズの松永麻里さんが出演。大好きだった俳優葛飾刻斎さんの芝居を昔良く観に行ったスタジオVARIOでした。
若い人中心に、真面目に作っていく芝居は好感が持てました。
「広島の姉妹」という原爆の話でした。
私は父が広島生まれで、運良く災を逃れたのですが、親戚には多くの被災者が居ります。この時期、こういう戦争のものを見る機会が多くありますが、本当に「ピカを落とされた」日本人だけが訴えられる事柄は沢山あると思います。
それに、本当にもうそろそろ、実体験をした人たちの声が聴こえなくなります。
今、私達がこういう体験をもっと有効に後生に伝えなきゃならない…と思います。
キンダーはそういう芝居をまだやったことが無いのですが、何か有効な形で残せないか…と考えるところです。

段ボールの宇宙
7/29 スターダス・21養成所中間発表 俳優Bクラス
スターダス・21アトリエ
金子みすゞの軌跡
7/28
沙羅舎

サーティーズの深水みゆきさんが出演。金子みすゞの生涯とその作品たちを朗読と歌で表現。

アルナの子どもたち
 〜パレスチナ難民キャンプでの生と死〜
7/28
アップリンクX

 うさぎちゃんから「是非観て」とちらしを渡してもらった映画「アルナの子どもたち」、彼女がボランティアをしているパレスチナ子どものキャンペーンでも応援しているドキュメンタリー映画を観て来ました。

 あらすじ(WEBページより)
 【イスラエルの平和運動家であったアルナ・メールは、1993年、スウェーデン議会から「もうひとつのノーベル平和賞」を受賞する。この賞金をもとにジェニンの難民キャンプに子ども劇団が作られ、アルナの息子のジュリアノが指導にあたった。演劇トレーングで、暴カ的な教師の姿を再現する子どもたち。また、日常的なイスラエル兵士による圧迫の様子も再視される。それでも、子どもたちは演劇を通して世界を広げ、夢を膨らませていった。
 しかしアルナが亡くなった1995年頃からイスラエルによるパレスチナヘの封鎖や攻撃が強まり、ジェニンでの活動はだんだん衰退していく。
 2002年4月、イスラエル軍は大規模な軍事侵攻を行ない、ジェニンの難民キャンプは大きな被害を受けた。500軒近い民家が破壊され、その跡は更地にされ多くの犠牲者が出た。
 ジュリアノはジェニンヘの再訪を決意する。そして彼がそこで見た現実は・・・・。】

 同じページに書いてあった文章。
 【2002年に実施された子ども1200人以上からの聞き取り調査の結果によると、パレスチナでは子どもの半数が具体的な軍事的暴力や恐怖にさらされ、半数の手どもが親は自分を守ることはできないと感じている。それでも7割の子どもたちは、自分の努力によって環境や人生を変えていけると信じている。一方、7%の子どもが武器を持って戦う道を選択すると答えていた。】
 
 もし自分の目の前で、自分が住んでいた家が壊され両親や兄弟が殺されたら……。想像することも難しいような今の私たちの環境の中で想像出来るとすれば、「テロリストになって報復する」という選択肢が全く無いことは無いということでしょう。
 アルナが、家を爆撃された子どもに心を吐露させ、「自分を、あなたの家を壊したイスラエル人だと思え」と言って、攻撃させるシーン(実際には彼の友だちがアルナに体当たりしていく)や、芝居の稽古の中で「いつもの教室の風景」を演じさせると、教師が生徒を思いきり殴ったりするところを演じる。その教師役の子どもは、「ヤメ」の声がかかっても止めない。壮絶な環境の中でも可愛い笑顔を絶やさない子供達の心に、鬱屈した闇を見る。
 
 これもちらしにあったコメントですが、
 【あるイスラエルの女子学生はこの映画を観終わった時、「驚きました。私はパレスチナ側にも夢を持っていて、笑っていて、こんなに可愛い子どもたちがいるなんて全然知りませんでした」と泣き乍ら言いました。彼女にとってパレスチナとは、いっさいの人間的な存在ではなかったのです。】

 一方の論理だけを信じこみ、敵は人間では無いと教えられる。「敵は憎いヤツなんだ」と信じこまされて自爆攻撃に行く青年の心は満ち足りているのでしょうか? そんな筈は無いけれど、でも闘いに意味を持たなければ先に進めない、生きていけない人生……。

 やりきれないのは、この映画に出てくる子どもたちはほとんど、今はこの世にいないということです。青年になったこの子たちは、ある者は殺され、ある者は4人のイスラエル女性を犠牲にして自爆攻撃を敢行しました。そして生き残り無事青年となった子どもまでが、今、自分が生き残って【しまっている】意味を考えているのです。

 ある子どもがインタビューに答えて、「僕の芝居は火炎瓶だ」と言うようなことを言っていました。善し悪しではなく「火炎瓶を投げる」程の芝居をするエネルギーを彼らが身体の内に持っているのは確かでした。悲しいことですが。このことは私に刺激と反省を与えました。「僕らはきっと素晴らしい芝居をする」と言い切った彼の目に嘘は無かった。
 アルナとジュリアノ親子の教育方法と人間的魅力の奥深さも素晴らしかった。

 東京での上映予定は明日で終了してしまうようです。渋谷アップリンクX 13時半〜 16時〜
 近々DVDも発売予定だそうです。

パレスチナ子どものキャンペーン

虚空へ…
7/24 スターダス・21養成所中間発表 俳優Aクラス
スターダス・21アトリエ
美しい人
7/7
文化村ル・シネマ1

ロドリコ・ガルシア監督の9つのオムニバスからなる映画。9つの物語が1シーン1カットで撮られている。非常に演劇に近い映画。どの女優たちの演技もそれぞれに良い。迫真の演技。でも臭くない。最終話のグレンクローズが泣ける。監督がシナリオも書いているのですが、男性なのにどうしてこんなに女の心がわかるのだろう? 或いは「女の心てこんなんでしょ? 」と突き付けられているだけかもしれないけど、いちいち琴線に触れます。是非女性に(まあ、男性にも)見ていただきたい映画でした。

Meia Noite
7/5 
Sugar Hill (草加)

Piano & Vocal * 冴 理
Guitar & Vocal *後藤 正人
この二人が揃わないと聴けない歌をたくさん聴くことが出来ました。
Sugar Hillは家から近いことも発見。またちょくちょく伺えるな。
主役の男が女である時
7/1 
彩の国さいたま芸術劇場大ホール

またまた刺激的なものを観てしまいました。
演出・振付・舞台美術を担当しているヤン・ファーブル氏は、ファーブル昆虫記のあのファ−ブルさんのひ孫だということだけ聞いていましたが、こんなに刺激的な舞台を作るとは……、またこんなに大勢のファンがいるとは知りませんでした。満席の中、韓国人ダンサーのスン・イム・ハーさんが一人客席に背を向けて黒いスーツを着て座っています。天井から下ろされた数多くの吊り紐にオリーブオイルの瓶をさかさまに取り付けていく彼女。やがてオリーブオイルはタラタラと床に垂れていきます。

最初は男性、やがて服を脱いでいくと女性になり、最後は魂のような(パンフレットには動物のようなと書かれています)存在になり、真っ裸でオイルの上で転げ回り踊り回ります。

下世話ですが、まる裸になられると、観客としては、やはり見えないところまで見てやろうとする本能が働きます。が、惜し気もなくすべてを(本当に全てを!!)見せられると、今度は視覚も聴覚も感覚も、その存在の在り方にしか電波を向けなくなるものだ……ということが判りました。初めは、「これを見せられた男性はきっと、ちょっと変な気持ちになっちゃうだろうなあ」と思いましたが、多分最終的にはそういう気持ちも無くなったかもしれません。

以前にも観た裸のダンサーは、胸の凹凸もあまりない少年のような華奢な身体の女性だったりしましたが、スンさんはメリハリボディーのやたら女らしい体躯の持ち主で、それだけでもうエロス満載なのですが、舞台の最後の方で、曲に合わせ乍らとにかくヤタラメッタラ、オイルの海で踊りまくる彼女の肢体は、本当に美しく……オイルでテラテラと輝くお尻は、部屋に置いていつまででも眺めていたいほど綺麗でした。
芝居仕立ての部分もあり、彼女が歌を歌ったり(上手い! )、台詞を言ったりするのですが、表情豊かで少し田舎ッぽい愛くるしい感じを醸し出していたのも、後半の固唾を飲むような都会的な動きと相反していて良かったと思いました。

しかし、途中で席を立つ女性もチラホラ……。確かに、性に対してかなり挑発的でありました。

アンデルセン・プロジェクト(ルパージュ版)
6/30
世田谷パブリックシアター

作・演出・出演 ロベール・ルパージュ。
その映像の技術の高さと驚かせ方と、またまったく反対にさりげない小道具一つで雄弁に表現する場面と……まず視覚的に楽しませる舞台でした。面白かった。
三役を演じる彼の演技もきっと上手いのだろうけど(英語で演じていました)、そのスピードと観せ方の工夫がすごい。
彼が演じる三役は、地下鉄で落書きをするモロッコ移民の少年、カナダ出身の若手作家(ルパージュ自身もケベック出身)、オペラ座のディレクター。
冒頭シーンの少年と映像のコラボの面白さと、このディレクターの場面で心がグンと引き込まれました。

<A HREF="http://www.parco-play.com/web/play/sept/andersen/intro.html">ここ</A>で少しだけ動画が見られます。

当初は3時間あった舞台を2時間ちょっとに縮めたそうですが、今は使わなくなった小道具や衣裳もいつも持ち歩いて全国を旅しているそうです。彼曰く「いつまた復活させるか判らないから」。

面白かったので翻訳家の松岡和子さんとのアフタートークも聞いてきました。
●彼は5年前にアンデルセン生誕記念に伝記的な作品創作を依頼されてこの芝居を作りました。アンデルセンは世間でも知られているようにかなり変わった人格であったらしく、アンデルセンの内側にある複雑さを、3人の登場人物それぞれの中に要素として重ねて作ったそうです。
●↑で面白い…と言ったディレクターのシーンのことで彼は、「松岡さんに翻訳して字幕を入れてもらっていてこんなことを言うのもナンだが、あのシーンは彼の喋っている内容はほとんど関係ないのです。フランス人は良く喋る。そしてどんな作家もオペラ座で仕事を貰うと、あのディレクターと会った時のような印象を受ける。そのことを表現したかった。」
●彼はそのことに関連して次のようにも言っていました。
「映像においては、そこから想起させられる音楽を、音においてはビジュアルを表現したい」
そしてこうも言っていました。「映画などにおいて本当に一番すごいサウンドトラックが、観客に残す印象は音そのものではない。シーンとして明確に残るのだ。そしてまた映像において一番豊かに表現されるものは音声である」
●アンデルセンの孤独について。
「ひとり芝居である…ということ自体が孤独なことです」

ひとりで3役を演じること、3人それぞれが抱え込む病的な孤独、アンデルセンのあまり知られていない童話「ドリアーデ」の挿話。これらをすべて一人で演じることで、その向こう側により深くその「孤独」が浮かび上がってきた。
そして「音でビジュアルを、絵で音を表現する」という言葉は、とても印象に残りました。

億萬長者夫人
6/29 劇団昂
三百人劇場

三百人劇場がまもなく無くなってしまうのだそうです。私が演劇を見始めた頃、三百人劇場へ行く回数がかなり多かった。久しぶりに行ってみると、座席の座りやすさ、客席空間の広さ、なかなか良い劇場なのに……老朽化なのでしょうね。ここで映画もよく観ましたね。町の映画館でかからないような良い映画をやっていました。寂しいことです。
お芝居はバーナード・ショウの「the Millionairess」を翻訳・書き換えた作品でした。
御案内いただいた要田禎子さんをはじめ達者な役者さんたちばかりで、言葉の応酬が面白く、日本の喜劇……って感じで笑えました。
しかし日本人におけるお金持ちのお話……って、どうもリアリティを感じられないのは、私が貧乏だからでしょうか?
(-_☆)

笑う招き猫
6/17 文化座
多摩教育センターホール

 昨日は原田演出、文化座公演「笑う招き猫」旅公演前の公開リハーサルが立川でありました。
昨年の初演とは若干キャストも変わっており、また新鮮に拝見しました。
 漫才士を目指す女の子二人の話……というと、同じく文化座で原田が演出した「天国までの百マイル」や「芥川シリーズ」と比べて、若い人にもとっつき易い感じの話であり、事実、キュートな感じの女優さんが二人で演じる漫才や、お笑いの場面なども入っていて一見楽しいお話でありますが、実はすごく人間の本質を捉えている話だなあ…と昨日二回目を観て改めて感じました。

 二人が「お笑い」をやることの目的や、そのレベルがすれ違ってくることの葛藤を、主人公の一人アカコは、その天性の性格から、あまり真面目に考えていない…という第一印象を客に与えます。アカコは悩んでいるのですが、ふざけてみたり、ギャグを言ってみたり、酒に酔ってみたり、家人が「今彼女はバイトとお習い事をしているのよ」という風に漫才を避けていたりということでそれを表現しています。
 
一方のヒトミの方は、アカコに誘われて漫才を始めたものの、いつもネタを考えるのは自分、売れて軌道に乗ってきたのにアカコとはすれ違ってばかり、アカコは逃げてばかりで捉えようが無い……という葛藤を真面目に悩みます。
 私が最初に思った印象は、アカコの方の悩んでいる内容を、演技や演出上でもっと分かりやすく出してくれたら……と思ったことです。
 でも、それは本当に短絡的だ…と昨日終わってからツラツラ思いました。この芝居は「漫才一代記」ではなく、「人生観」の話なんだなあ、「幸せって何なんだ」という話なんだなあ…と思いました。
 
 「有名になって、カーネギーホールで漫才をやるんだ」とこだわっていたアカコが、ラストシーンで自分たちのライブハウスに向って「ここが私のカーネギーホールだったんだ」という台詞(これは原作にも脚本にも無く、原田が足したシチュエーションらしいのです)、また二枚に破って分けた初ギャラの1000円札(これも原田の発案だそうです)が終幕で形を合わせるシーン。ここにアカコの代えがたい人生観があり、それが浮かび上がって見えてきた時(……私にとっては、昨日の観劇の何時間か後だったのですが)、この芝居の面白さがくっきりと分かった気がしました。そしてそれはアカコにとっても非常に漠然と理解した、しかし確固とした人生に対する信念なのだと思いました。「芸術における幸福論」を考える芝居だったんだなあと思いました。その為には「悩み苦しむアカコ」の姿をアカコ自身否定しなくてはいられない程の真剣さが必要だったのでしょう。その姿が、最初は私にはアイマイな態度に見えたのだと思いました。

 初演を観てから随分時間が経ってから分かったことが多く、まあこれも、鈍臭い私には嬉しい経験であったと、二回観られたことを有難く思いました。

ピアノのはなし
6/11 京楽座
1010ミニシアター

噂の中西和久さんのひとり芝居を初めて拝見しました。「泣くよ」と言われて、わざと劇団員と席を離して座りましたが、内容よりも演技の方に重点を置いて観てたら、それほど泣かなくて済んだ。「月光の曲」と「特攻」のイメージが切なかった。これほど直接的じゃなく、何か「反戦」の話が私にも出来たら良いといつも思うが、そういう題材は難しいなあ。

砂の女
5/28 三条会
1010ミニシアター

1010ミニシアター「日本語を観る」シリーズ第1弾。
客席と舞台の作り方に目を見張りました。面白い!! 「砂の女」のイメージが涌く舞台作りでした。

革命的浪漫主義
5/4 発見の会
麻布die Pratze

大好きな俳優牧口元美さんがずっと出てらっしゃる「発見の会」。アングラ集団というので興味を持って拝見して参りました。相変わらずのチカラの抜けた牧口節が聞けて楽しかった。

向田邦子展
5/4 
銀座松坂屋

朝たまたま読んでなかった向田邦子を買ったら、松坂屋で向田邦子展をやってたので入った
愛用品などが展示してあったが、私はもっぱら壁に貼ってある文章の抜粋を読んで歩いた
面白い人だなあ
おしゃれな人だなあ
才能の人だなあ
生きていたら、少し怖いけど会ってみたかった
母と変わらない年齢だったのにびっくりした
貼ってあった中に久世光彦さんの文章で面白いのがありました
「『寺内貫太郎一家』で、上野の西郷さんに付いた鳥の糞を洗う為に取り外すから、一日貫太郎が犬を連れて立つことになった、という脚本を書いてきた時、向田さんはやけにたのしそうだった」

尺には尺を
5/3 アカデミックシェークスピアカンパニー
銀座みゆき館劇場

「えれくとら」に出演してくれた白州本樹さんが客演。

プラド美術館展
4/30 
東京都美術館

ムリーリョの「貝殻の子供たち」は、やはりきれいだし心を動かされました。それからスルバランのボデゴン(静物画)は、いわゆる私達が良く目にする野菜や花などの時を移り変わりを感じさせる静物画ではなく、ツボとか容れ物とかそういう「ずっとそこにあり続けるもの」を描くことで、より「時」というものを感じさせていると解説がありましたが、本当にそうでした。

父と暮らせば
4/29 青年座
青年座スタジオ

青年座養成所時代の同期 野沢由香里の一人語り
最初から最後まで泣き通しだった。この作品は語りなどでやられることも多い作品ですね。あそこまで芝居にしたら、もう本を持っているのが邪魔な気がしたけど、それが今回のコンセプトなんでしょう。全部芝居にしたらどんな風になるんだろうと興味が涌きました。
それにしても一人芝居で客席を埋めた由香里、偉い!!
それからNHKアナウンサーもマッサオなカツゼツの良さと声の落着きは、長年ナレーションなどもやった賜物だと感じました。

弥々
4/20
1010ミニシアター

何年か前に観た時には感じられなかった様々な事柄が浮き上がってきて、何年も一つの芝居を演じ続けることの素晴らしさを知った気がしました。同じ劇場で6月に演じる者として、何かビシッと喝を入れられたようで、身が引き締まる思いで帰って来ました。

秘密の花園
4/20
シアター1010

高校生の時にハマっていた状況劇場。その面影を求めて見に行きましたが、パンフレットにも書いてあった通り、もう唐十郎の芝居を、それだけの目で観てはいけない…、もっと普遍的な演劇として捉えなければいけないという意見には賛成だったので、なるべくそういう目で見ないようにしていた。が、やはり、大久保鷹や十貫寺梅軒の「あの」雰囲気を感じると、他の人たちが「違う」ように感じてしまうのは、私が「その」見方から開放されていないからだろう。
しかし、こういう芝居を演じる時に「役の解釈」というのはどこまで必要なのだろうか。あるいは台詞や存在の意味の理解など全く必要としなくても、成立する「センス」のみあれば良いのではないだろうか?
と、観ながらそんなことを考えた。

春の宴
始まりは音楽室

RabiSari 音あそび
ジョイントコンサート
4/7 RabiSari
コア石響

アンデルセンで音楽監督をしていただいた和田啓さんと松本泰子さんのユニット。以前にも書いたことのある、ウードという楽器を演奏する常味さんと3人の素敵なグループが、音あそびというグループとジョイントコンサートを開きました。啓さんと音あそびのリーダーは小学校の同級生だそうです。で、「始まりは音楽室」なのですね♪
石響は以前目黒幸子さんの「清貧潭」を原田演出で行なった場所。いつものライブハウスとは違って雰囲気で、相変わらずのうさぎちゃんの美声に聞き惚れました。

女が階段を上がる時
3/31 黒門町
武蔵野芸能劇場

福原秀雄さん率いるこの団体、このところ演出なさっているのは、方の会の狭間鉄さんです。好きな芝居でした。何より役者が上手く思えた。それから方言がとっても自然で、みんな「地」の人かと思いました。レギュラーで出演している川野誠一さんの御案内で行って参りました。

303
3/26 盗難アジア
中野ウエストエンドスタジオ

「えれくとら」で私の息子オリンを演じてくれました、古木知彦君の所属する劇団です。彼はモテモテ君を演じてました。でもそれより目に焼き付いたのは、フンドシひとつでバク宙3回!! すごい身体能力です。

My Funny Dandy
3/18 演劇集団「YOU」
さいたま文化センター小ホール

なんか感動しちゃったよ。みんな上手いんだなあ。アマチュア集団だと思っていたのですが、びっくりです。私のタップの先生、中山えつこさんがコーラスで出演していました。それからワークショップに来てくれていた古土井ちゃんも出演していました。

一人二役
3/16 劇団NLT
銀座みゆき館劇場
ああ のんきだね
1/15 遊人塾・劇舎
シアターサンモール

ふりだした雪

1/8 新春新派公演
シアター1010

波乃久里子主演の久保田万太郎作品。新派の舞台はきっと子供の頃、好きだった父に連れられて行ったはずなのだが、イメージと随分赴きが違った。

久保田作品だったせいもあるけど、とっても静かな演劇でした。そして渋かった。水谷八重子が波乃久里子に、「久保田作品はフランス語だと思いなさい」と言ったとパンフレットに書かれていました。まず訳して全部普通に日本語にするところから始まると。美しい言葉だけれど役者も苦労する感じで、それがまた禁欲的で良かった。周りのおばさまたちから休憩後「ああ、あのお芝居はあれでおしまいだったのね」と言う声が多く聞かれました。(笑)

もうひとつパンフに書いてあった水谷語録。「静かな役をやる時は普段エネルギーを使いなさい。そして芝居はゆっくりやりなさい。派手な役の時には普段ゆったり静かに。発散したいのを押し殺し、その苦しみから生まれる「花」をお客様に飛ばす。それが『品』になる。」
ふ〜む。なるほど。頭ではわかります。実践もしてみたいものです。

しかしおばさんは芝居を観ながらよくしゃべる。そして「ダレソレはダレソレの娘よねえ」というような話を必ずする。(*^_^*) ちなみに波乃久里子は17世中村勘三郎の娘、18代中村勘三郎のお姉さんです。

二幕目は華やかな日本舞踊と口上で幕を閉じる、お正月らしい作品でした。