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「或ること」をいふために芝居を書くのではない。芝居を書くために「何か知ら」いふのだ。
(「新進作家の立場から」都新聞1924)
処女作「古い玩具」を描いた直後の岸田國士の言葉。これ故に岸田國士は芸術派と呼ばれる。
なるほど「古い玩具」、代表作「チロルの秋」「紙風船」で、劇的な事は何も起きない。
では「命を弄ぶ男二人」は? 「動員挿話」は? 「風俗時評」は?
『切歯扼腕』と言う言葉がある。歯ぎしりして自分の腕を握りしめること。
軍人家庭に生まれた仏文青年。ヨーロッパの日本人。西洋演劇の輸入。翻訳劇しかやらないと宣言する築地小劇場。大政翼賛会文化部長。日本近代化。
岸田國士は、『切歯扼腕』の人。日本に戻って、いやベルエポックのパリの異邦人であった頃から、歯がみして腕に爪を立てていた。
その彼の「或ること」をいうために書くのではない、は、ほとんど「叫び」のはずだ。
しかし一方そんな「叫び」に書くべき価値はない、と宣言しての作家活動。これは喜劇に結実する。ついには「知らん!」と叫ぶ。
と、いうわけで、キンダースペース初めての岸田國士は、
「麺麭屋文六の思案」「留守」「遂に『しらん』文六」の三本立て。ご期待ください。
演出 原田一樹
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