劇団キンダースペース レパートリーシアターVol.46 k#91
林修司・宮西徹昌 企画

「岸田國士の夢と憂鬱」その一 ジレンマの夜

【麺麭屋文六の思案】【留守】【遂に「知らん」文六】 連続上演

作/岸田國士 演出/原田一樹

 「或ること」をいふために芝居を書くのではない。芝居を書くために「何か知ら」いふのだ。 
 (「新進作家の立場から」都新聞1924)

 処女作「古い玩具」を描いた直後の岸田國士の言葉。これ故に岸田國士は芸術派と呼ばれる。
 なるほど「古い玩具」、代表作「チロルの秋」「紙風船」で、劇的な事は何も起きない。
 では「命を弄ぶ男二人」は? 「動員挿話」は? 「風俗時評」は? 

 『切歯扼腕』と言う言葉がある。歯ぎしりして自分の腕を握りしめること。
 軍人家庭に生まれた仏文青年。ヨーロッパの日本人。西洋演劇の輸入。翻訳劇しかやらないと宣言する築地小劇場。大政翼賛会文化部長。日本近代化。

 岸田國士は、『切歯扼腕』の人。日本に戻って、いやベルエポックのパリの異邦人であった頃から、歯がみして腕に爪を立てていた。
 その彼の「或ること」をいうために書くのではない、は、ほとんど「叫び」のはずだ。
 しかし一方そんな「叫び」に書くべき価値はない、と宣言しての作家活動。これは喜劇に結実する。ついには「知らん!」と叫ぶ。

 と、いうわけで、キンダースペース初めての岸田國士は、
「麺麭屋文六の思案」「留守」「遂に『しらん』文六」の三本立て。ご期待ください。

演出 原田一樹