公演活動

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 キンダースペースは、その演劇活動がわが国及び海外のリアリズム演劇の系譜の上に立つという認識の元に、演劇制作の専門集団として、脚色及び演出家原田一樹のオリジナル作品の創作公演と、リアリズム演劇の専門俳優の育成とを軸に、主催事業を行なってまいりました。
                     
 2001年からは、近代リアリズム劇としてとらえなおされたギリシャ悲劇を上演。殺人にまで至る人と人の葛藤を、自我が崩壊に至る近代的なアイデンティティーの喪失と重ね合わせ、対立する人間像を描きました。この「対立」はいわば西洋的思考の根本であり、この思想によって個人というものが生きていることが、そのまま演劇のドラマになるわけです。今後はこれらの作品の創作による経験をふまえ、「日本人」という固有性について問い返し、表出していきたいと考えています。 
                  
 近代以降、日本人のアイデンティティーはどのように出来上がったのか。日本人という国民はいつ現われたのか。それ以前の日本人とはどのような存在で、その何を我々は内面的に受け継いでいるのか。現代の日本人を作ってきた最も大きな要素は何であるのか?  
 そういった問題に切り込み、また深い所で応え得る作品を、いわゆる「新劇」といったわが国独特の演劇の潮流から少し離れた系譜の中から択り出し、演出、創作表現していきます。俳優たちにおいても過去三年間の作品制作の過程をふまえることで、演技においても「日本人」というものに対し距離を持った、批評的なアプローチを求め得ると考えます。

 世界を巻き込んでいくグローバリズムの流れの中で、私たちが独自であり、同時に諸外国の芸術作品と拮抗し得るものを作り上げるには、自らを掘り下げることを除いてはありえません。また、これがそのまま安易に日本的なるものへの回帰とならないための創作上の立脚点を持つことも重要だと考えます。