「演劇人が“家に帰る”って」

5/12

先日、久しぶりに浅草の浅草寺に行っておみくじひいたら、凶でした。前におみくじをひいたのは5年以上も前だと思うけど、それまで絶対にいいのなんか出たことなかったので、長いことおみくじには見向きもしなかったのに、「こんだけ久しぶりだから、なんかいいの出るかもしれない」と思った自分が甘かった。

で、書いてあることが「新しいことに進まずに“家”に帰れ」というものでした。その日はたまたま父の誕生日だったので、文字どおり実家に帰って、近頃身体がゆうこときかなくなっている父に、少し親孝行らしきことをしました。いつもより素直に色々やってあげる心境になれたので、「ああ、これがおみくじに書いてあったことなのかな」なんてボンヤリ思ってました。

そして、今日。来年のキンダースペースの公演の為に「シアターX ( カイ)」(以下カイ)のプロデューサー上田美佐子さんにお会いしました。劇場をお借り出来るかどうかの相談で伺ったのですが、色々と面白いお話をしてくださり、楽しい時を過ごしました。

上田さんは先日亡くなった郡司正勝氏から色々と演劇に関わることを教わったとおっしゃっていました。カイで上演する「青森のキリスト」という芝居の作・演出を郡司氏がなさる時に取材旅行に同行した時以来のつきあいで、私も’96に「歩く」という公演(制作・上田美佐子、演出・郡司正勝)を観ましたが、同公演をポーランドでも打って、評判を得たそうです。(4/24日経新聞「交遊抄」に詳細が掲載されてます)

上田さんのお話を伺っていて、劇場のプロデューサーとして当然のこととはいえ、本当に芝居のことを親身に考えている人だな……と思いました。外国に行って色々な勉強もしていて、「日本人独自の“動き”というものに対して、今の演劇人はあまりにも無意識すぎる。」と、郡司氏から学んだ日本人的な動きの独自性について説明してくれながら、「演劇人は今やること一杯あるんですよ」とおっしゃいました。

本当にその通りだと思い、具体的にどういう風にしていったらいいのかを、ものすごく初歩の部分から勉強し直すことが必要だと思いました。

それと同時に、今、演劇に必要なことは何なのか……、自分が芝居をすることだけでなく、もっと大きな視野で観られれば、それがゆくゆくは自分に帰ってくるかもしれないと思いました。

こういう風に「考える時間」を与えてくれた上田さんに感謝しながら、上田さんに限らず、やはり一線で活躍する人たちの考えの深さを目の当たりにすることで喚起される「想い」は大事にしなければ……と考えました。

演劇人が「家に帰る」というのは、今日みたいな時間を持てることかな……とも思いました。

私の周りの演劇の先輩たちに感謝!
……そういう一日でした。