ハムレットを、生きる!

公演の概要

我々日本人とはなにか、我々はどこから来て、均一化していくこの世界の中で何処にいこうとしているのか。

太宰治は「新ハムレット」の中で、シェークスピアの"ハムレット"という、自我によって切り裂かれる若者のドラマを、近代日本人の曖昧さと同一性の集団における「自立のドラマ」に描きなおしました。

今回の「新・新ハムレット」はこれをさらに、メタシアターとしての二重構造の中で立体化する試みです。

自ら仕組んだゴンゴーザ殺しと言う劇中劇に於いて、ハムレットが叔父クローディアスと母ガートルードの内面を暴いたように、日本人俳優の演じる「はむれっと」が、太宰のハムレットを演じ、また、演じられる構造を観客とともに見ることが、太宰を典型とする我々日本人の精神を浮かび上がらせます。

劇場は観客席が舞台を囲むようにしつらえられ、その観客席の片隅にハムレット(=はむれっと)の席も用意されています。

ここで観客が立ち会うのは、日本人により二重に演じられるハムレットと、その向こう側にあるもうひとつ別のハムレットを想像力の中で見ることであり、その構造のなかに「世界のなかの一人の日本人」の姿を見ることになります。構造としての演劇、その効果を最大限に引き出したいと考えています。

構成・演出 原田一樹