今回が第30回公演というだけあって、完成度はきわめて高い。

脚本・演出・演技力、加えて言うなら舞台セットのセンスの良さ、どれも十分に満足できた完成度の高い芝居。
イプセンはいくつか原作も読んでいるが、120年以上も前の時代の社会通念としての家庭に鋭い矢を放った彼の戯曲が各劇場で上演拒否されたこともあったことは十分に頷ける。
確かに暗い。でも、今日においても彼の作品に触れるたびに十二分に考えさせてくれる。
脚本は緻密で、無駄がない。
演出も自然体で心地よい。

出演陣も見事にそれに応えている。
まさに三位一体の感があり、本当に満足できた。
キャストは一部ダブルキャストだが、私の観たBキャストの回では、うえだ峻さんは別格としても、特に、ヤルマールの妻を演じた小林元香さんの自然で目つきや些細な顔の表情で揺れ動く心を表わすような好演には本当に感動した。
グレーゲルスを演じた客演の白州本樹(スターダス・21)と、14歳のヘドヴィク役を演じた秋元麻衣子、ヤルマール役の田中修二、さらには医師役の仲上満ら団員組もみな熱演が光った。
シアターXの客席キャパをかなり減らしてまで、舞台を広くとり、セットにも気を配っていた点も見逃せない。