『えれくとら』 最近のアジアの中でのわが国と他国のさまざまな軋轢や、戦後あらゆるジャンルでアメリカそのものを無条件に受け入れてしまったあり方を考えるまでもなく、今、私たち日本人は、世界の中で我々がどのような存在であるのかを問われています。ユージン・オニールがギリシャ悲劇を核に置いて神を失った人間の欲望と罪について描いたこの作品が、西欧人のみならず人間の存在の根本を強く打つのは、過ちを犯す姿にこそ人の本質があるという哲学に貫かれているからです。我々が我々自身の姿を知るということは、存在の一番深い部分に目を向けるという行為をおいては成立しません。この作家の作品を日本人やアングロサクソン以外の人種が上演するということに違和を唱えるむきも少なくありません。しかしこの違和こそ、我々の鏡となりうるものです。逆に彼の作品が米国内で上演される折には違和がないというものでもありません。そこに私たちは、この作品を上演する意義を感じるものです。 2002年の初演で好評をいただいたこの作品を、闇の中に浮かぶギリシャ風+能舞台のセット、新構成・新演出によりまったく新しいスタイルで上演します。 構成・演出 原田一樹 |