・Sさん

「僕たちの中の龍之介」公演、お疲れ様でした。
様々に感慨深く、楽しみました。
それぞれの題材が、リーディングや秋の公演等で観たものであったことから
今回は、それらとの差分が感じられ、結果、演出の技が際立って感じられた次第です。
様々な芝居の演出の技、舞台の装置、役者の立ち位置、照明、音響等が効果的に使われ、
どちらかといえば地味な小説の素材をきちんとドラマとして立ち上げていることが感じられました。
昨今私は、テレビドラマなどでBGMや映像の細工が派手と思うことが多く
少し静かにしてくれたほうが感情や状況が伝わるのにと、感じることが良くあるので
必要と感じられる分の効果が添えられている様子は、なかなか心地よかったです。
そういう意味で芝居表現のエッセンスを覗ける感覚がとても大事に思われ・・
ということもあって、再見した次第です。
また、劇団員の人たちはそうした効果を良く理解しつつそれぞれの持分をきっちりと
こなしている感じがし、劇団のチームワークの良さも感じました。
役者それぞれでは、瀬田さんのミスラくんが出色。
語りとの使い分けで何とも言えない雰囲気が醸し出されていました。
客演の太田さんは、ボソっと小さい声でつぶやくセリフがいいおかしさを出していました。
白の有本くんは、彼の小動物的な動きの持ち味が良く生かされていたと思います。
魔術のシミタクくんには、力強い演技が備わってきたと感じます。伸び盛り・・かな。
安食さん、森下くんの昭和(大正?)少年少女コンビは、レトロな感じが味わい深く
秋元さんも少女役以外の役をきっちりとこなした印象でした。
平野くんや元香さんには、こなすだけでなく役者としての重みも感じられ
出たとき、立ったとき、よろけたとき、ころんだときとかに存在感が漂っていました。
そして、深町さんの老婆は、やはり間が大変面白かったです。
ロスメルの給仕役といい、何か独自の芸域を生み出しそうな勢いを感じます。
全体通じ、お芝居の表現を分かり易く掴むには素敵な作品になっていると思いました。
これはきっと教育的価値があると思いますね。学校での上演とかいいんじゃないでしょうか?



・Uさん
僭越ながら、
本日、とても良い舞台だったと思います。
ある、形ができ上がったのではないでしょうか。
キンダーの売りの舞台だと思いました。
原田さんの本が素晴らしいことはもちろんですが、
読み手と演じてとの境がなくて良かったと思います。



・Yさん
今日は、とても充実した一日でした。
キンダーの芝居にも、どこか余裕さえ感じられ
とても楽しめました。
日本の近代文学を
あのようにとりあげて舞台化するということに
感謝したい気持ちでいっぱいです。



・善福寺のプラナリアさん

「平野雄一郎君はキンダースペースの宝物です! 」
ああ、面白かった!
芥川龍之介は要するにキンダースペースの「基本英文500選」の役割を担っているんですね。
ベースになるものを「暗誦」しているのみならず
その「文法」もまた理解しているからこそ
「課題作文」・「自由作文」も自在にこなせるのですね。
<褒めすぎ>ついでにもう一言。
タイトルに揚げましたとおり
平野雄一郎君はキンダースペースの宝物です。
笑いを噛み殺しながらそう思ったのでございます。
取り急ぎ「観劇雑感」まで。



・Mさん

二週間前に、ワークショップでお世話になった劇団です。
芥川龍之介の、白、魔術、龍という3つの作品を、様々なスタイルで演じられていました。
まず劇場に入って、小さな場所のはずなのに、凄く奥行きがあるように感じて、びっくり。しかも、美術が美しい…
ワークショップの時はリーディングだった「白」は、白という犬を演じる俳優さんはほとんどしゃべらないで、皆さんで進行したり演じられたり面白かった…白役の方の演技、何度も泣きそうになりました。
魔術は、以前一人の朗読の舞台を見た事があったのですが、リアルに何人かで演じたり、語りになったり…音楽や照明のタイミングも抜群で、派手な事はなくても、まさに目の前で魔術が行われているかのよう…
龍。私、この作品知らなかったので、かなりドキッとしました。これは完全にお芝居仕立て。
にしても、皆様の役者力、高し☆役者の力で、何もない空間に、無限の世界が生まれるんだなあ。
それでいて、芥川の文体を大切にしていらして☆
緊張感のある作品ばかりでした。芥川が自殺したのって7月だったんですね…

それもあってか、見終わって切なくなってしまいました。
今日赤羽経由で行くはずが、間違えて駒込から王子の北とぴあに行きまして…田端文士村とか、染井霊園とか、芥川にゆかりの地の近くに思わず行ったのかと感慨深かったです。
また私もがっつりしたお芝居やりたくなってしまいました。




・kさん
とても楽しい舞台でした。
演出も素晴らしいと素人ながら思いました。
とくに「魔術」のナレーション?とせりふの使い分けや
あたかも魔術を目の前にしたと錯覚するようなその見せ方に引き込まれました。



tetorapackさん
やっぱり秀逸! キンダーは流石
 私としては、キンダーの短編演劇アンソロジーシリーズは2回目で、1回目も芥川の作品だったが、今回もまた、その秀逸さに大満足できた。

 キンダーの作品に対する真摯さには、いつも頭が下がる。そして、劇団員の粒のそろった演技力は安心して作品の世界に浸れる。

 さて今回は芥川龍之介の「白」「魔術」「龍」の3編。最初の2作は「語り手」を効果的に配した演出がお見事。最後の「龍」は全開に続き2回目の観劇だが、キンダーの演技力の確かさを改めて感じた次第。

 今回の会場は見晴らしも見事な「北とぴあ」15階のペガサスホール。しばし眺めを堪能してから会場へ。シンプルながら竹を巧みに配した感じのよい舞台セットに期待を福らわせながら、開演を待つ。座席もゆったりめに配置され、心地よかった。

【白】
 その名の通り、体全体が純白の飼いイヌ「白」はある日、街角でイヌ殺しにによって知り合いの黒イヌが殺されてしまうのを目の当たりにした。そのイヌの「助けて」の声を見捨て、自分のご主人様の家に逃げ帰ると、自分の毛全体が黒くなってしまっていた。黒くなった“白”は自分を可愛がってくれたご主人様の2人の子にも野良犬と間違えられて石を投げられ、家を出なければならなくなる。そして、自分が犯した罪をそそごうとして、狼や大蛇と闘ったり、列車に惹かれる寸前の幼子を救ったりの自己犠牲的な行動を重ねたが、それにも疲れ、殺されてもいいからと、最後にご主人様の姿を観てから死にたいと家に戻ると、気がつかないうちに白に戻っていた、という童話。

 この物語では、白と、白が救った子犬のナポ公、ご主人様の2人の子の4人(イヌも含め)にか登場しないのに対し、語り手は次々と8人を投入し、物語の厚み、説得力を増した点に驚かされた。なかでも、そのトップバッターと2番手の瀬田ひろ美さん、小林元香さんの語りは秀逸そのもの。以降の皆さんも安定感抜群で、さすがキンダーの総合力を改めて実感させられた。

【魔術】
 ご存じの方も多いと思うが、この作品に登場するマテイラム・ミスラという魔術師は、谷崎潤一郎の短編小説『ハッサン・カンの妖術』からの転用という面白さがある。学校の教科書にもよく採用されるこの作品は、主人公の「私」が、マテイラム・ミスラの邸宅を人力車で訪ねる場面から始まる。
 そこで実際、テーブルクロスの花柄を指でつまんで取り出してみせたり、灯の入ったランプを激しく回転させたり、本箱の中の本を部屋中に飛び交わしたり、そんなことをいとも簡単にしてしまうミスラくんの魔術を目のあたりにし、伝授を乞う。「欲さえなければ誰でも体得できる」と伝授されるが……。
 短い小説なのでネットでもすぐ読めるので、これ以上の説明は省くが、ここでは、語りであり主人公の「私」をミスラくんの側と私の両側から2人の俳優が演じるようにした手法が冴えていた。
 「私」役の清水拓也さんの演技も流石だった。

【龍】
 池に龍が住み、近く天に昇るとウソの立て札を書いた僧・恵印と、それに翻弄され盛り上がる民衆の心理を描いた物語。今回も恵印役の太田鷹史(彼のみ客演)が味わい深く名演。村の女役・安食真由美さんが今回もいい味を出していた。