両国・シアターカイで 
 劇団キンダースペース「銘々のテーブル」
 (作=テレンス・ラティガン、翻訳・美術・演出=原田一樹)

 舞台はイングランド南部の海岸町の古い小さなホテル「ボーリガード」。避暑地であり、冬は孤独な男女の避難所でもある。
 物語は「窓際のテーブル」と「七番目のテーブル」の二つのオムニバス。

 第一話は12月。
 元政治家のジョン・マルカム(森下高志)は妻アン・シャンクランド(榊原奈緒子)へのDVにより、その地位を棒に振ってしまう。今では左翼系新聞への寄稿で生計を立てている。ジョンとホテルの経営者ミス・クーパー(瀬田ひろ美)の間には親しさ以上の関係があったが、結婚に踏み切れずにいる。そこにアンが偶然投宿することになる。8年ぶりの再会。落魄したジョン、再婚したがうまくいかなかったアン。アンがホテルに来たのは偶然だったのか。

 第二話「七番目のテーブル」はそれから1年半後。
 主役は第2次大戦の英雄だったというポロック少佐(白州本樹)と、尊大な母親モード・レールトンベル(安部百合子)に依存するオールドミスのシビル(古木杏子)。
 快活でにこやかにふるまうポロック少佐だが、新聞の三面記事を見た元学校長ファウラー(花ヶ前浩一)によって過去の経歴を偽っていたことが発覚。ポロックは恥じてホテルを出ようとするが、内気なシビルは彼に自分の臆病を見る。2人の孤独な魂が共振する。しかし、尊大で人の間違いを認めようとしない母親モードはポロックの退去を求めて滞在者に諾否の投票を要請する。
 登場人物は、モードの腰ぎんちゃくマシスン夫人(小林もと果)、競馬新聞を読みふけっている孤高の女性ミーチャム(石井ゆき=昴)、婚前旅行の若いカップル、医学生のチャールズ(関戸滉生)とジーン(坂本奈都実)、ウエイトレスのメーベル(齋藤美那子)とドリーン(北夏央里)。

 ちょっとした気持ちのすれ違い、わだかまり、赦し。
 男と女の間に横たわる愛の問題を描いた名作。原作「Separatetables」が書かれたのは1954年。それから66年。

 今の時代と微妙に違うのはポロック少佐の性犯罪への対応だろうか。
 彼は英雄を詐称し、映画館で何度となく女性への痴漢行為を行っていた。1954年ではそれを「心の病気」として、更生への「赦し」を与えていた。しかし、今、女性に対する繰り返される性犯罪は「情緒的」に赦されるものではなくなっている。66年前には許された二つの孤独な魂の「赦し」による再生の物語というテーマが時代によって微妙に変化していることも感じた。
 
 物語の要となるクーパー役の瀬田ひろ美が包容力のある演技で舞台を統べた。アンの榊原の艶麗さ、ジョン役・森下のシャープな演技、軽薄さと孤独が同居するポロックの白州、自分に自信が持てず他者に依存するシビルの古木もいい。そしてなによりも気難しく誇り高いモード役の阿部百合子(俳優座)の口跡の良さ、際立つ存在感が舞台を引き締めた。素晴らしい女優だ。

                              山田勝仁(演劇ジャーナリスト)